株式会社クロスディエムでは、鹿児島県 令和7年度「食品関連製造業リーディングカンパニー創出支援事業(経営力ステップアップ支援)」を受託し、鹿児島県の食品関連製造業を牽引する企業の創出に向け、専門家による伴走型支援により商品開発や販路開拓、営業力強化を総合的に支援してまいりました。
2026年3月6日、事業終了前に鹿児島県庁 18 階・かごゆいテラスにて開催された「成果発表会」のなかから、参加された事業者4社の取り組み紹介を中心としたレポートをお届けします。
1:事業プログラムの構成とコース設定
2:取組事例の紹介①~鹿児島オリーブ株式会社(日置市)
3:取組事例の紹介②~薩摩ハム株式会社(鹿児島市)
4:取組事例の紹介③~株式会社中園久太郎商店(指宿市)
5:取組事例の紹介④~株式会社太(鹿児島市)
6:商品開発への取り組み方
7:ミニセミナー「食品市場の傾向と対策」
8:商談成果サマリー
〇ご挨拶
最初に主催者である鹿児島県商工労働水産部 産業立地課 参事 安藤義則氏から「3つのコースに分かれ、非常に前向きにそして積極的に取り組んでいただいた。今日をもって事業はいったん区切りとなるが、事業での経験を今後に活かしてほしい」とご挨拶をいただきました。
〇事業紹介
続いて事業企画・運営を担当した株式会社クロスディエム 塚元新二から事業プログラムと成果をご紹介しました。
1:事業プログラムの構成とコース設定

※以下の各社の取り組みは、事業者からの発表に続いてインタビュー形式でさらに深い内容を伺い、最後に商品開発の方法について伺う構成となっています。
2:取組事例の紹介①~鹿児島オリーブ㈱(日置市)鹿児島オリーブ株式会社 代表取締役 水流 一水氏

【事例発表】A:商品ブラッシュアップ&専門家派遣コース
オリーブオイルの販路拡大を目指したものの…
こんにちは、鹿児島オリーブ株式会社の水流です。日置市を拠点とし、シンボル事業として県産オリーブオイル製造、そしてイタリア・スペインにある契約農園のオリーブオイルの輸入販売、3つ目に食品・スキンケアのオリーブ加工品の製造販売を行っています。
昨年、梅雨入りが非常に早かったことで受粉が進まず収穫量が激減、県産オリーブオイル事業が厳しい事態となりまして。加えて輸入オリーブオイルの販路が拡がらないこと、販路としてギフト提案以外の営業に弱いという課題がありました。
最初「輸入オリーブオイルを売りたい」と相談したのですが、専門家の馬田さんから「オリーブオイルを売場に並べるのは非常に難しいのではないか」と。「加工品を通じてオリーブオイルを売っていく、そこから主原料のオリーブオイルへ」という助言をもらい、腑に落ちました。
商習慣の学びに加え、同行営業で口座開設も
そこで注目したのが既存商品のドレッシングです。「これだと子どもが野菜をよく食べる」というお客様の口コミ。オリーブオイルに対していただく反応に比べて、具体的なんです。ドレッシングは「誰かの課題を解決する可能性がある商品」かもしれないと捉え直しました。
その結果、この会社にきてからの3年半で、最も手応えを感じた商談会・展示会となりました。同行営業をきっかけにベンダー(問屋・卸)さんとも口座開設の契約段階に入り、「親会社の展示会に出てみないか」という話もいただいて、大きな一歩になりました。

【インタビュー】
―「オリーブオイル」と「ドレッシング」、そんなに反応が違うのはなぜ?
水流さん:オリーブオイルは基礎調味料、売場に並ぶ商品にはすでに固定のお客様がついていて、バイヤーとしてもなかなか商品の入れ替えがしづらいジャンルとわかりました。
―東京のベンダー(問屋・卸)さんに同行営業もされました。
水流さん:同行営業も初めての経験で、1社目のあと「今のは良かったけど、ここは変えよう」と助言をもらい、軌道修正して次の商談にのぞむといった進め方でとても良かった、おかげで確度の高い商談になりました。
―昨日のフォローアップ面談では「掛け率」のことなど質問していましたね?
水流さん:最初は「帳合」という言葉も知らなくて…。商談を進める中で意味がわからない言葉や先方の依頼にどう応えるべきかなど、すぐに聞ける専門家が側に居てくれたのはとても心強かった。商談後すぐに発注が来たのも初めてです。
―いろいろと学んだことが多かったようですね。
“やるべきこと/やらないこと”を、成約の確率を上げる観点で判断する。そのことを本当の意味で理解できたのがこの伴走支援の収穫でした。新商品開発もスピードアップしていきます。
―販路開拓の専門家として同行営業された馬田さん、その狙いは?
販路開拓専門家・馬田さん:
担当した3社さんとも、九州のベンダー(問屋・卸)さんとのお取引が多かったので、首都圏市場開拓における課題だと感じました。口座がないと先に進みませんから。そこを解決してからスーパーマーケット・トレードショーにのぞみたかったので、1月に首都圏ベンダー(問屋・卸)さんへ同行営業をしました。現在口座開設が進んでいるので着実にプロセスを進めていただきたいところです。

―成約に向けて動きつつ、次の商品にも着手しなければ…というタイミング、忙しくなりそうですね。ありがとうございました。
3:取組事例の紹介②~薩摩ハム㈱(鹿児島市)薩摩ハム株式会社 管理課 酒井 雄大氏

【事例発表】B:専門家派遣コース
営業力を向上させ自社商品の販路開拓を
谷山港に工場があり従業員数が 30 名ほど、事業内容としてソーセージの生産販売を行っています。今回の事業では昨年度この事業のブラッシュアップコースで商品開発していた3商品「無塩せきベーコン、鹿児島県産黒豚ソーセージ、鹿児島県産チャーシュースライス」で出展しました。
今回は、1つ目に自社商品の販路開拓、2つ目に“薩摩ハム”の知名度の拡大、3つ目に営業力を向上させることが参加理由です。弊社は他社ブランド商品の OEM 製造が中心、その中で自社ブランド商品を携えての取り組みです。
この事業の中では、専門家の西村さんと営業での話し方の練習を行って、1月の鹿児島商談会、2月のスーパーマーケット・トレードショーに出展しました。
経験無しから初営業、成約に向けて商談進行中
現在商談中・成約見込みの会社が5社、まだ増えている所でもあり、自社商品の販路開拓に向けて商談を進めています。また私個人としても所属は管理課、営業をしたことがなく右も左もわからない状態でしたが、話し方の練習から始まって、わからないことを色々教えていただいたことが、非常に勉強になりました。

【インタビュー】
―初めての営業に向けどんな練習をしましたか?
酒井さん:まず初めに「短くてよいので商品の紹介をしてみて」と言われましたが、頭が真っ白、一言も話せなくて…。「友達みたいな口調でもいいよ」と仰っていただいても、それでも話せない…。こんな状況で商談会や展示会に行っていいものかと不安からのスタートでした。
―そこからどんな風に商談会・展示会まで進んでいった?
酒井さん:面談の1回目はまったく商談トークができなくて、会社に帰って練習したものの、少ししか話せない状況でした。
―1月の鹿児島商談会では一日で5~6件商談がありましたよね?
酒井さん:先輩の清田からも「やってみて」と言われまして…。自分で商品紹介して商談して、だんだんうまくなっていく実感がありました。一緒に商談した清田にフォローしてもらいながらですが。2月の SMTS では話しかけやすい雰囲気で、積極的にご案内できたと思います。
―力強い言葉ですね!このプロセスを見ていた先輩の清田さん、いかがでした?
清田さん:鹿児島商談会では「失敗してもいいからチャレンジしてみよう」と伝えてやってもらったら、初回の商談から思いのほか上手に話せていました。最初と比べたら見違えるような出来でした。
―営業体験ゼロから、ご自身が中心となって商談を進める所まで経験、今後の初成約が楽しみです!ありがとうございました。
4:取組事例の紹介③~㈱中園久太郎商店(指宿市)株式会社中園久太郎商店 店長 中園 大喜氏

【事例発表】C:展示会出展コース
創業明治 45 年の老舗漬物会社、原料不足に直面
弊社は創業明治 45 年で、指宿市に本社と工場があり種子島にも工場があります。本社はJR 日本最南端の駅「西大山駅」の前で、直売所「かいもん市場 久太郎」を構え、観光客が非常に多い場所。近くに来られたらぜひお立ち寄りください。
主な商品は大根を主原料とするたくあんです。大根やぐらで干した大根を使って漬物を製造していますが、農家の高齢化などの影響で生産量が減少しています。そのため一昨年からは、農家から仕入れた大根を自社の大根やぐらで干す取り組みも始めました。
大根は農家さんから仕入れますが、それを洗って結束して干すとなると全身筋肉痛になるほどで…。農家さんの大変なご苦労のすえ美味しい漬物ができているんだなと実感しています。
仕入れとお客様の課題を解決する新商品
今回は「さつま沢庵」の梅味と味噌味、2種類を出品しました。先ほどの干し大根不足の問題、そして一本丸ごとのたくあんはお客様にとっても大きい・重いという課題もあって企画した、生大根を原料とした小サイズ化したたくあんです。
バイヤーさんにも、漬物単体で食べるだけでなく素材の一つとして使っていただく提案も行っていきました。自社の SNS を通じてレシピ提案を行い、漬物の消費拡大も図っています。
スーパーマーケット・トレードショーの商談ではすでに発注をいただきました。この会社は昔取引がありましたが、展示会でお会いすることで取引が復活した形。継続的に展示会に出展することが取引につながっていくんだなと改めて感じました。

【インタビュー】
―今回の「さつま沢庵」の発売開始はいつですか?
中園さん:昨年の 10 月です。さきほどの復活取引以外としては、ちょうど3~4月開催の鹿児島フェアで、既存商品にプラスして「さつま沢庵」も取り扱いいただいている状況です。
―干し大根が不足しているんですね?
中園さん:お客様はいらっしゃるのに原料が足りていない。一部ではありますが自社で掛け干しを始めましたが、今後は農業法人などの取り組みで規模の拡大を図ることを真剣に考えているところです。
―スーパーマーケット・トレードショーには継続して出展されているようですが変化は?
中園さん:ほぼ毎年出展していますが、県ブースでの出展は「鹿児島」というブランド力や会場での存在感という意味で、お客様も安心してお立ち寄りいただいている感触があります。自身としても最初はチンプンカンプン、不安だらけでしたが、自信を持って自社商品を PR できるようになりました。
―食品流通の仕組みや掛け率などは会社の先輩たちから教わったのですか?
中園さん:実は…この事業に初参加した時に改めて勉強したんです。会社には大まかな目安や教えはありましたが、その理由まではわかっていなくて。当時のこの事業で商流や原価計算を教えてもらい、自分でも興味をもって勉強した経緯があります。
―歴史ある会社の中でも改めて食品流通の仕組みを勉強されたことが、安定的な販路開拓につながっているんですね。ありがとうございました。
5:取組事例の紹介④~㈱太(鹿児島市)株式会社太 代表取締役 中島 常夫氏

【事例発表】A:商品ブラッシュアップ&専門家派遣コース
BtoC に加え、BtoB の販路を拡大したい
食肉卸、お弁当・サンドイッチ等の製造、鹿児島中央駅でのお土産品店舗販売など幅広い事業に取り組んでいます。お弁当やカツサンドを鹿児島中央駅で、冷凍ハンバーグやタレ付け肉などをネットショップ・ふるさと納税でお届けしていますが、中心的な商品はカツサンドです。
この事業には「BtoC 以外の販路が欲しい」という理由で参加しました。BtoB の進め方、たとえば商談の進め方や掛け率を知らない、必要な資料や展示方法がわからないといった課題もありました。
大型の展示会で「チャンスがある!」と実感できた
商談会や展示会で BtoB のお客様とつながることができたことが一番大きな成果です。わからなかったことも勉強でき、他社さんが取り組んでいるそれぞれの方法を目の当たりにできたことも非常に勉強になりました。
初めての展示会がスーパーマーケット・トレードショーとなったので、「いきなりトップクラスの展示会に行った」ということでもあり、緊張もありましたが、良い機会をいただきました。

【インタビュー】
―もう4社も成約したとは速いですね!
中島さん:そもそも口座を持っていたということがスピードにつながっています。
―そのギフトなどの商品は卸販売となりますが、卸用の商品は初めて?
中島さん:卸用商品は初めてですね。卸用となるとロット生産になるし、お弁当・サンドイッチとはまったく勝手が違いました。今までのカツサンドは常温でしたが、「これの冷凍できる?」というさらなる展開のご要望、新たなアイデアもバイヤーさんからいただきました。
―「チャンスがあるとわかった」とお話されていたようですが…
中島さん:いやいや…チャンス、めちゃくちゃあります。スーパーマーケット・トレードショーの来場者の多さ、(意外とうちの商品にも食いついてくださるんだな)とすごく感じました。正直、鹿児島にいる時は(うちなんかじゃダメかも…)という気持ちもありましたが、出展してみて「引き合いがあるんだな」と。あとは製造ロット、供給量が課題となりますね。
―今回の商談先はもちろん、また別の話も進みそうですね。ありがとうございました。
6:商品開発への取り組み方
―どの専門家も「まずは商品」とおっしゃいます。各社でどのように商品開発に取り組んでいるかを、株式会社メセナ食彩センターさんも含めて伺いました。

薩摩ハム株式会社・酒井さん、清田さん:この商品は前年度の本事業の中で開発した商品。「男性向け」と設定したお客様像に合う商品を、弊社の既存商品の中からピックアップして、シリーズとしてブラッシュアップしました。自分たち自身がおいしいと思うもの、を選んだのがベースです。
―既存商品を組み合わせて再編集されたんですね!
株式会社中園久太郎商店・中園さん:以前は商品開発担当がいました。その時は毎週の会議で試作品を検討したり、営業から要望を出したりを繰り返していました。今はその仕組みがないのですが、「さつま沢庵」は会社として抱える課題をどうにかしないといけないという強い意気込みで開発しました。ただ生産性も必要なので、商品を新規開発するのと同時に既存商品の整理も必要だと考えています。
―確かに! 既存ラインナップの見直しも必要ですね。
鹿児島オリーブ株式会社・水流さん:2パターンあって、県産オリーブ関連の商品開発は自社発で、「うちのみかんとオリーブオイルで何かできないかな」など声をかけてもらう場合もあります。ただ「誰に買っていただくか、使っていただくか」という視点での商品開発ができていなかったという反省がこの事業の中で生まれてきました。
―だから今回はお客様の声に向き合ったんですね。
株式会社太・中島さん:精肉卸もやっているので原料から発想して開発する場合と、市場の商品をヒントとする場合があります。商品というよりはシーンを重視。中央駅で売るサンドイッチだと新幹線で食べることになるし、百貨店催事では自宅で何人で食べるのか。そういう「シーン」です。
―「シーン」を想定すると商品開発もシャープになっていきそうです。
―初めて新商品開発したメセナ食彩センターさん、どうやって商品開発しましたか?

株式会社メセナ食彩センター・上村さん:入社して新商品がない4年間でした。今年は念願の「A:商品ブラッシュアップ&専門家派遣コース」で採択され、専門家の馬田さんと相談しながら進めてきました。
馬田さんからの「スーパーの棚は大手さんの商品で埋まっているが、スパイスの棚は広がっている」という助言を参考に、看板商品の柚子胡椒をベースにした調味料という基本コンセプトが浮かび上がりました。
小さい会社で商品開発部はありません。生成AI を活用して「世界で流行ってる調味料を教えて」と調査をしたり、試食の反応を持ち帰り工場で試作を繰り返したり。初めての商品開発で、正直自信無かったんです。ただ試食で良い評価をいただいたので、残りの賞味期限の確認など行って、しっかり世に出していきたいですね。

―今すぐ取り入れられそうなヒントや着眼点を教えていただきました。ありがとうございました。
7:ミニセミナー「食品市場の傾向と対策」
今後に向けて食品市場の傾向と対策についてご紹介しました。

8:商談成果サマリー
1)鹿児島商談会(1月開催、鹿児島市)

・9バイヤーと16事業者で85商談を実施。
・当日での「取り扱い希望」は15件。
・参加バイヤーからは「新たな仕入れ先の開拓ができた」「問屋経由ではなく事業者から直接説明を受けて理解が深まった」「事業者それぞれの取り組みや熱意を感じられた」との声が届く一方、「その土地ならではの背景(ストーリー)があり、他社・他商品との違いが明確な商品を期待する」とのアドバイスも届いている。
・事業者からは「バイヤーと今後も継続的な商談ができそうだ(10/16 社)」「ターゲットであるバイヤーと商談できた(7/16 社)」「バイヤーから今後のアドバイスがあった(7/16 社)」との感想だった。
2)スーパーマーケット・トレードショー(2月開催、幕張メッセ)

・来場者が8万人を超える大規模な展示会。
・事業者アンケートでは、展示会での名刺交換のうち自社判定で「1/3 が高い成約確率」で、「1/3 が継続案件」。
・立ち寄りバイヤーとの良い商談や新規顧客との出会いもできており、「来場者数も多く活気があり、非常に有意義な展示会 であった」「新規商談に加え、既存取引先との関係強化や出展者同士の情報交換など、多方面で成果を感じた」と手応えを感じている事業者さんが多い。
当該レポートはこちらからDLもできます
https://cross-d.jp/wp-content/uploads/19408e4a4e099ff878fffd6879c7239e.pdf
株式会社クロスディエム 